お正月の象徴でもある鏡餅。鏡開きの際に「切ってはいけない」と聞いたことはあっても、その理由を正しく説明できる人は意外と少ないのではないでしょうか。
実はそこには、年神様への敬意や武家文化に由来する深い意味が込められています。
本記事では、鏡餅を切ってはいけない理由から正しい鏡開きの方法、さらには現代の楽しみ方までを分かりやすく解説します。
鏡開きのしきたり!切ってはいけない理由とは?
年神様を切ってはいけない
なぜお餅を包丁などで切ってはいけないのか?
まず1つに、鏡餅には、年神様が宿るものなので、それを切るというのは年神様を切るという行為にもつながるため、縁起が悪いといえます。
切腹を連想させるので切ってはいけない
また、鏡開きという行事は、もともと武家の中ではじまった行事といえわれています。
武士といえば、刀のイメージがあると思いますが、刀は武士にとって神聖なもの。
刀で切る、という行為は「切腹」を連想させるということから、切るという行為は縁起が悪いとされてたそうです。
そのため、鏡餅は切ってはいけないといわれるようになりました。
切ってはいけない理由として、もう一つあります。
固いものを刃物できるのは危険
皆さん、固くなったお餅ってとてもカチカチですよね?
落としても、ひび一つ入らないくらい、意外に固くなったお餅ってカチカチなんです。
そんなカチカチのお餅を刃物で切るのは、とても危険な行為です。当たり前ですが、固いものを無理やり切ろうとすると、万が一滑って指を切る可能性があります。
固いものを包丁で切るのは危険であるため、鏡餅を切ってはいけないとされています。
以上が鏡餅を切ってはいけない理由になります。
最後に、「切る」「割る」といった言葉も忌み言葉とされています。縁起がいい、末広がるという意味で「開く」という言葉を使い「鏡開き」と言われるようになったといわれています。
切ってはいけない理由って知ってるようで知らないし、普段何気なくやっていることが、ちゃんと意味があるって素晴らしいですよね。
鏡開きに込められた歴史と地域ごとの違い
武家社会から広まった鏡開きの由来
鏡開きはもともと武家社会で武運長久を祈る儀式として広まりました。
鏡餅を刀で切ることは「切腹」を連想させるため、縁起を担いで「開く」という表現が使われたのです。
武士の文化が庶民へと広がり、現在の鏡開きの形になったといわれています。
地域によって違う鏡開きの日
鏡開きは一般的に1月11日ですが、関西では1月15日や20日に行う地域もあります。
これは、松の内(門松を飾る期間)の違いによるもので、地域ごとに伝統が残っているのです。
自分の地域のしきたりを確認し、正しい日に行うとより縁起が良いとされています。
現代の鏡開きの楽しみ方
近年では家庭用の鏡餅が小型化し、切らずに手で割れるよう工夫された商品も多く販売されています。
さらに、開いた後はお雑煮やおしるこだけでなく、ピザやグラタン風にアレンジする家庭も増えています。
伝統を守りながら現代風に楽しむことが、鏡開きを続けていくコツといえるでしょう。
鏡開きの正しい開き方を解説!
乾燥した鏡餅は、カチカチに固くなっています。
先にも説明した通り、鏡餅を切るのはNGなので、「木槌でお餅を叩く」のが一般的に正しい開き方です。
中には、鏡餅を柔らかくして包丁で切るという人もいるようですが、ここはしきたりに習った方法で行うことをおすすめします。
乾燥した鏡餅を大小にばらして、一つ一つ木槌や金槌で叩いても簡単に開くこともできますが、なかなか割れないという場合もあるかと思います。
そこで、ひと手間加えて確実に鏡餅を割る方法をご紹介します。
加熱するときは、お餅の様子を見ながら時間を調節して行ってください。
次に、電子レンジを使わずに鏡餅を割る方法もご紹介します。
この方法は切る行為が発生してしまうので、切ることをしたくないという人はおすすめしません。
まず飾る前に、包丁で「お餅に切り込みを入れておくこと」。
飾る前が理想的と思いますが、乾燥して固くなった鏡餅でも切り込みを入れる方法があります。
それは、大根を切った包丁で鏡餅を切る方法。
大根に含まれるアミラーゼという酵素が、お餅に含まれるデンプンを分解して柔らかくするという効果があるようです。
そのため、大根を切った包丁で鏡餅を切ると切りやすくなるらしいです。
このようにひと手間かけることで、鏡餅を割ることができますし、調理しやすい状態になります。
鏡餅を開くのが面倒だと言って捨ててしまう人もいるかもしれません。
ですが、鏡餅は年神様が宿った縁起の良いパワーフードです。捨てずに、鏡開きで鏡餅を開いて、家族みんなで食べるようにしましょう。
鏡開き後の調理を想定して、事前に小分けしやすいように鏡餅を適切な大きさにしておくのもポイントです。
例えばあまり大きな鏡餅は飾らない、ひびが入りやすいようにしておくなど・・・、少し工夫して鏡開きまでのことを考えて計画的に準備しておくと、後々手間が省けるかもしれませんよ。
ぜひ参考にしてみてくださいね。
鏡餅を切ってはいけない理由とは?【まとめ】
今回は、鏡餅の切ってはいけない理由と開き方を解説しました。
切ってはいけないとはいいますが、実際固いお餅を開くときには、包丁を使う必要もあるかもしれません。
しきたりだからといって頑なに守る必要はないと思いますが、「切ってはいけない」ということを分かった上で行うことが良いかもしれませんね。
最後に、鏡開きを行う理由について少しご紹介します。
鏡開きには、年神様をお見送りし、下げたお餅を食べることで、年神様が宿していった力を授かるという意味があり、家族で鏡餅を食べて、新年の無病息災を願います。
また、新年の健康と長寿を願う「歯固め」という儀式でもあるそうです。お供えした鏡餅は水分が抜けてカチカチに固くなります。丈夫な歯の持ち主は何でも食べられて長生きできるため、丈夫な歯で過ごせるようにという願いも込められています。
鏡開きという行事ひとつとっても、そこで行われる行為にはたくさんの意味があり、願いが込められていることが分かります。
昔から続くしきたりの意味を理解して、1つ1つの事を丁寧に行うことは自分の人生を豊かにしてくれます。
鏡開きだけでなく、他の行事にもぜひ興味を持って行ってほしいと思います。