お正月に欠かせない「しめ縄」。
でも、よく見ると左巻きになっているのはご存じですか?
実は、しめ縄が左巻きなのには、古代から続く「左は神聖、右は俗世」という考え方が関係しています。
この記事では、しめ縄が左巻きである理由や意味、古代の思想との関係をわかりやすく解説します。
しめ縄は左巻きが基本
そもそも、しめ縄の縄は何で出来ているのでしょうか?
縄は藁(わら)で出来ているのですが、米を収穫した後の藁ではなく、青々とした稲を乾燥させたものが良いものとされています。
お米を収穫したあとの藁も、中に混ぜて使うのですが、麻と糠を混ぜたものでよく揉んで、油分を抜くとしめ縄に適した縄が出来上がります。
縄が出来ると、それをより合わせて綯(な)う方法に「右巻き」と「左巻き」が存在します。
昔から、日用品で使う縄は右巻きに、「神事で使うしめ縄は左巻き」とされてきました。しめ縄は神聖なもので、日常に使う縄とは区別する必要があったからです。
もともと日本には「左は神聖、右は俗世」とする考え方がありました。例えば、神社に参る際に拍手をしますが、両手を合わせた後、右手はやや左手より引いて手を打ちます。
他にも盆踊りが左回りであるのは精霊を迎えるためであり、死者の着物は左前にしますよね。
また「左右」という言葉がありますが、「左上右下」の考え方は飛鳥時代、遣唐使を通じて中国から伝えられたものです。
左巻きに込められた“神聖さ”と古代からの思想
左=神聖、右=現世という古代日本の思想
しめ縄が左巻きとされるのは、古来の「左は神聖、右は俗世」という考え方に基づいています。
神社での作法を思い出してみると、参拝時の「二礼二拍手一礼」では、右手を少し引いて左手を前に出して打ちます。
これは“左側が清らか”とする象徴的な動作なのです。
また、神事では左回り(反時計回り)に舞ったり巡ったりすることが多く、「左回り=祓い清める動き」とされています。
神道の“左上右下”思想と中国からの影響
「左上右下(さじょううげ)」という言葉は、中国の陰陽思想から伝わった概念で、左が陽=上位、右が陰=下位とされました。
日本でもこの思想が取り入れられ、左は神・天・陽を意味する“上”の存在として扱われるようになります。
神様に関するものを左巻きにするのは、まさに“神域に通じる方向”だからです。
右巻きと区別することで「神事用」として明確に
日常生活で使う縄(農作業や生活道具)は右巻き、神聖な儀式に使う縄は左巻きと、古来より明確に区別されていました。
これは「俗と聖を混ぜない」という日本人独特の信仰的潔癖さを表しています。
つまり、左巻きのしめ縄は「ここから先は神の領域」という印。
その方向づけ自体が、神様への敬意と清めの象徴なのです。
しめ縄はなぜ神聖なのか?
しめ縄の起源は、神話時代にさかのぼります。その昔、太陽神である天照大御神は、弟の須佐之雄命が乱暴であることに怒り、岩戸に隠れてしまいました。
空も真っ暗になって困った人々は、天照大神に出てきてもらおうと、岩戸の周りで踊りました。
その音に気が付いた天照大御神が岩戸から出てくると、再び入らせないように岩戸をしめ縄でしばった話が伝わっています。
しめ縄は漢字ではどう書く?
先程説明した、天照大御神のしめ縄には「尻久米縄(しりくめなわ)」と記されています。
一般的には、しめ縄を漢字で書くと「注連縄」になります。中国で、死者が再び家に入ってこれないよう、家の入口に水で清めた縄を張っておく風習(注連)がありました。
日本にあったしめ縄と、中国の風習で使われていた縄から、日本でも「注連」という文字が使われるようになりました。
万葉集には、しめ縄を「標」という言葉で表して3つの意味で使っていました。
・道しるべ
・俗世と神聖な領域を分ける
それが現在では俗世と神域を分ける、しめ縄の由来となりましたりました。
他には七五三縄、〆縄などと書きます。
しめ縄の飾り方
縄の太さの中央部が太いものが「大根型」、片方だけ細くなっているものが「牛蒡型」と呼びます。
飾るときは向かって右側にモト(太い部分)がくるように取り付けます。神様から見たときには、向かって左側にモトがくるからです。
なお喪中のときは、正月飾りは一切飾ることができません。
しめ縄は左巻きが基本なのはなぜ?【まとめ】
・しめ縄の巻き方には2種類ある
・日用品で使う縄は「右巻き」、神事で使う縄は「左巻き」とする
・古来から左が神聖、右は俗世とされている
・しめ縄の起源は神話までさかのぼる
・しめ縄の漢字表記は「注連縄」「標縄」「七五三縄」「〆縄」などとなる
・しめ縄には「大根型」「牛蒡型」とあり、太いほうが神様から見て左側に来るようにする
今回はしめ縄の巻き方について考えていきました。歴史を紐解いていくと、今日まで脈々と引き継がれていることに驚いてしまいますね。
しめ縄やしめ飾りの正しい飾り方で、良いお正月をお迎えくださいね。